スイスからも頼りにされる時計修理技術を
工程把握システムで収益事業に育てる

共栄産業株式会社

代表取締役 小林正博氏(写真右)
取締役 部長 秋田秀仁氏(左)

共栄産業株式会社

所在地 東京都豊島区巣鴨1-19-12 八木下ビル
事業内容 時計修理業、海外高級時計の輸入・販売
設立 昭和43年
従業員数 83名
URL http://www.kyoeico.com/

kyoei-2.jpg 白衣を着た技術者がレンズを覗き黙々と手を動かすその部屋は、むやみにくしゃみなどできないような、静粛な空気に包まれている。
 東京都豊島区の共栄産業は、ロレックスをはじめ、世界に名だたる高級時計の修理やオーバーホールを手がけている会社。数百万円レベルの時計がここで一つひとつメンテナンスされているのだ。
 腕時計の電池販売から海外の高級時計販売、修理業へと事業を広げてきた同社は、時計修理の第一人者、宅間三千男氏を招き入れたことをきっかけに修理技術者を志望する人材が集まり始めた。今では時計の国・スイスから難しい修理を依頼されるほどになっている。

専門家ゆえの気質が 採算割れを生んでいた


 高い技術者を有し信頼を寄せられている同社であるが、実はこの点が経営課題でもあった。小林正博社長は3年前までの状況をこう打ち明ける。
 「修理事業は毎月200万円ほどの赤字を出していました。というのもプロが1日2~3点修理するところ、新人は1個程度。3年ほどかけてやっと一人前に育てたと思ったら、他社に引き抜かれることも...」
 技術者は長い育成期間=先行投資を要するのに加え、"時計好き"が集まる現場には、興味のある時計から取り掛かったり、作業スピードへの意識が薄いなど、専門技術者ならではの風土があった。
 技術力を維持したまま、いかにビジネスとして軌道に載せるか?
 共栄産業ではコンサルタントを招いて業務改革に踏み出し、並行して稼働が不安定だった業務記録データベースを業務改革に沿ったシステムに置き換えるべく検討を進めた。業務フローを見直す一環として、一連の修理工程をビデオに撮影し段取りの改善を考えることも行ったという。

工程が数値でとらえられ 効率が1.5倍に


 2006年春には新しいシステムが完成。業務改善プロジェクトと一体となり、社内に変化をもたらした。 「修理依頼を受けてから納品までの工程をすべて記録し一元管理しました。作業室にパソコンを置き、技術者は修理開始と終了を登録します。これによって誰がどの修理を何時間かけて行ったかを把握できるようにしたのです」
 CIO役を務める取締役の秋田秀仁氏はIT活用の第一の意図を説明する。各人の工程を"見える化"することで、管理者も数値に基づいたジャッジができ、技術者側の意識も高まった。当初は猛反発があったが、強制せずに、雰囲気作りがなされるのを見守ったという。
 さらに、再修理が発生した場合は、原因を究明して記録し、社内で共有。同社の再修理率は業界平均よりかなり低いが、さらに下げて手戻りを排除しようというものだ。
 こうした結果、月間3000個だった修理個数は1.5倍の4500個レベルに上昇。現在は5000個がこなせる体制になった。
 また、本システムは修理品が今どこにあるかをトラッキングできるので、「お客様からの問い合せにいつでも正確に回答できるようになった」(秋田氏)のも大きい。
 修理技術という強みを、業務改革とIT化によって収益が上がる事業に伸ばすことができた。

会社の現状を見直し 強い体質作りを


 修理工程の業務改革が一定の成果を見た共栄産業は、さらに、企業としての体質改善にも取り組んでいる。ITコーディネータ阿部満氏の協力を得て、2008年には自社の現状を再分析。人事改革や次なるIT活用も検討しているという。阿部氏は、「皆さんとディスカッションして中長期戦略策定のお手伝いをしています。日本一の修理技術をアピールするホームページ作りなど売上を伸ばすためのITによってもっと伸びる会社だと思います」と言う。
 時計修理業のビジネスモデルとして、国内のみならず海外から注目を集める日も近そうだ。


本事例は、COMPASS2009春号(リックテレコム社)に掲載されました。
COMPASS http://www.telecomi.biz/compass.htm

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支援ITコーディネータ紹介

ITコーディネータ
阿部満氏
ブリッジ・リサーチ&コンサルティング 代表
http://www.bridge-rac.com/

 IT経営に関するリサーチ事業とコンサルティング事業を行っている若手ITコーディネータ。IT経営応援隊の研修会インストラクター、J-SaaS普及指導員など、公的機関の講師としても活躍している。
 共栄産業とは、2008年春先のIT経営キャラバン隊活動で交流を持ち、同社の企業としての体制確立をサポートすることに。
 社内でプロジェクトを組み、SWOT分析などによって現状を洗い出した。企業理念の策定や人事制度改革の相談にものっているそうだ。
 秋田氏は、「他社から『コンサルティングが入って無理矢理やらされている』と聞くことがありますが、阿部さんの話には皆、真剣に耳を傾けています。本当に改革したい気持ちが醸成されているように感じています」と言う。
 阿部氏の分析では、「共栄産業さんはIT経営のステージ3まできています。ステージ4の企業間最適化段階へ進むには社外との情報交換が重要なので、ホームページの有効活用などもご案内しています」とのことだ。良い会社をさらに磨くのもITコーディネータの大切な役割である。

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