時計修理部門のIT化がIT経営のきっかけに

共栄産業株式会社は1968年に創業し、時計の修理事業を中心に、その他では高級輸入時計のディストリビューター、そして店舗展開の3つの事業を柱にビジネス領域を広げてきた企業です。
同社がIT経営に取り組んだきっかけは、2005年に経済産業省関東経済産業局の呼びかけでの中小企業創業・経営革新等支援補助金(IT活用型経営革新モデル事業)へ応募したことが始まりでした。
当時、中小企業診断士でトヨタ式の見える化を専門とする経営コンサルタントを招き時計修理部門の改善(カイゼン)活動を行っていた真只中に、IT化も同時並行で対応する必要を考えていた小林正博社長とCIO(情報最高責任者)である秋田取締役がIT活用型経営革新モデル事業に応募し、補助金を得ることができたことが最大のIT経営化のチャンスでした。
修理部門の生産性向上が最大の経営課題

当時の同社の最大の経営課題は修理部門では優秀な技術を揃えていても(時計修理技術者40人体制)、1日にこなせる修理には限りがあり平均で3000程度であったことでした。
一方、時計修理業界では日本国内で最大の技術者数を抱え知名度が高かったため、徐々に注文が増え、3000個の範囲を超えた場合は断るなど機会損失が発生していました。

そこで、取り組んだのはまずは「カンバン方式」を採用し修理現場での業務フローが軌道に乗った段階でIT化を行うといった改善活動を行いました。
同時に業務をより見える化するためにIT活用型経営革新モデル事業を活用し、修理や進捗、修理在庫などの状況が把握できる管理システムを導入しました。
その後2007年から稼働を開始しました。
現在、1月得平均で6000本の修理が可能となり、約200%もの生産効率が向上され同社の50%以上の売上を占めることとなりました。
販売不振を解決するためのホームページリニューアル
今度は一定の成果に満足せずに後に「守り」の業務カイゼンを行ったことで修理部門単体では一段と業績を伸ばす体制が整ったことになりますが、一方では経済環境の悪化などにより高級時計の販売が不振となっていました。
その時期に東京商工会議所のIT経営応援隊事業の講演に偶然にも共演することとなりました。
そこで、同社のIT経営の取り組みに関して、今後、より成長するため には、まずは、中長期IT経営戦略の策定でした。
小林社長とCIOの秋田取締役そして幹部が中心で、勤務時間終了の夕刻から約1年間を掛け、じっくりと腰を据えて、経営理念として「チャレンジ精神で成長し共に栄える共存共栄企業」と定め、売上低迷に対しての現状打破に向けて戦略を練り上げていきました。
特に重視する経営課題について改めて洗い出すために、自社の強みと弱みの内部環境要因、機会と脅威の外部環境要因を把握する「SWOT分析」を行った結果、導き出した答えは、修理部門の最高品質の技術や生産性を中核に、 高級輸入時計のディストリビューター、そして店舗展開に活かす事業展開でした。
そこで、IT経営戦略を実行することで、業績見通しは、売上成長率10%増の維持、経常利益5%増を確保するというものでした。
そこで、まず、戦略に従い、最も緊急を要する攻めのIT化にはホームページをより誰に対して明確に自社の強みや差別化要因を訴求するか?

そして、どのような修理技術やディストリビューターとしての時計のラインナップなどを見える化できるかに注目する事業ドメイン分を経て、新たなホームページを作成しました。(
http://www.kyoeico.com/)
これにより、時計修理業界におけるパイオニアとしての地位を更にPRできることとなりました。
同時に時計修理士が持つ時計店として時計修理技術と品質の高さを全面的に訴求したPR方法に決定したのでした。
取引企業との情報連携による更なるIT経営

また、次なる戦略実行として、同社の主要な取引際に対して、時計修理のステータスを見える化することで、取引先が顧客の修理情報の問い合わせに対して瞬時に回答できるようになり、取引先を含め、業務効率を向上させると同時に顧客満足度向上にも成功しています。
このように共栄産業株式会社は、守りと攻めのIT経営を通し実績を徐々に伸ばし、2009年度にIT経営力大賞認定企業に選ばれました。
今後のIT経営を実践するためには、顧客の情報を如何に共有化し、積極的に情報配信を行っていくかに掛ってきています。
企業を存続と成長させるには、守りだけでもダメ、攻めだけでもダメ。共栄産業のように守りと攻めの両立の戦略とIT化によるバランスが重要です。
そこに気づかれた共栄産業は今後も、日本の職人気質の時計修理業務を中核に発展していくことでしょう。