システム数が増えても
システム維持管理費を増大させない体制をつくる

秋田県

秋田県 学術国際部 情報企画課 IT改革推進班のメンバー
 副主幹 菊地智英氏(写真左)
 主査 武藤幸子氏(右)
 IT改革推進監 岡崎 宏氏(中央)

秋田県

人口 113万4000人(平成18年10月現在)
面積 1万1612km2 (全国第6位)
産業別就業率 第一次産業 11%、第二次産業 27%、第三次産業 62%

 秋田県では、寺田典城知事の直接指示で、平成17年度から県庁内各課の情報システムを対象に、維持管理費の見直しに着手した。ITの費用をテーマとしたテレビ番組がNHKで放映され、秋田県民からも県の現状を問う声が出たことがきっかけだったという。
 担当課である学術国際部情報企画課がまず行ったのは人材の確保だった。  「職員は3年ほどで人事異動があり、専門的なノウハウを蓄積しにくい面があります。技術論に入るとどうしてもベンダー任せになりやすい。改革の推進には外部からの人材登用が必要と判断しました」
 同課の菊地智英副主幹は当時を振り返る。
 その後、IT改革推進監(CIO補佐官)としてITの専門家である岡崎宏氏を採用。情報企画課内にIT改革班を設置し、県庁内各課が現在利用しているシステムの構成や維持管理の内容を調べ、システムの棚卸を進めていった。

大規模システムを対象に削減できる費用を探す


akita2.jpg 県庁内にはトータルで147のシステムが稼働、うち大規模なものは11と判明した。この11システムを対象に維持管理にかかる費用構造を調査し、人件費の削減をポイントとして、費用の削減を行った。
 しかし、個別のシステムごとに行う費用削減には限界がある。情報企画課では「次は、いくつかのシステムを統合して維持管理費をスリム化できないかと仮説を立てた」(菊地氏)。
 課を横断しての統合管理となるとプロジェクトにはさらに専門性が求められる。そこで実行へのコンサルタント役として迎えたのがITコーディネータ(ITC)であった。
 平成18年度、19年度と2年にわたり、地元秋田のITC・大澤昌氏を中心としたチームがコンサルティング業務を受託。システム維持管理費削減の研究・企画をサポートしている。

本当に統合管理できるのか? システム内容を洗い出し


 コンサルティングチームの仕事は「秋田県の状況を調査・分析し、課題の輪郭を捉えること」からスタート。先に調査した各課の情報システムについて、さらにソフトウェア、ハードウェア、維持管理にかかっている人件費の細部に踏み込んで現状を洗い出した。そのうえで「統合できるところはどこか」「より良い方策は何か」をテーマに、担当課の職員と侃々諤々の議論を重ねている。 この過程で当初イメージしていたシステム統合化の難しさも見えてきた。「まとめて管理する」考え方から、今後増えるであろう維持管理費を抑える体制づくりへと焦点が移っていったのだ。新しいテーマは、横断的視点による維持管理費削減に向け、県の情報システムとして共通基盤を作ること、システム調達・維持管理の共通ルールを作ること、それらを実行するための組織づくりの3点と定められた。それに基づき、まず職員が並行して作成を進めていた「情報システム調達指針」、「情報システム調達マニュアル」の策定とともに、「維持管理統合化実行計画」を策定した。

コンサルに求めるのは「ここ秋田では」どうすべきか


 ITC大澤氏は、総務省が推奨するEA(組織全体を通じた業務・システムの最適化を図る設計手法)、プロジェクトマネジメントなどの情報を精力的に収集。的確な提案を行うべく奔走を続けている。
 ただ、大澤氏は修得した知識をそのまま持ち込んだわけではない。情報企画課の岡崎氏はその様子をこう表現する。
 「共通基盤、全体最適化等のテーマは全国レベルでも研究されていますが、我々が求めるのは一般論ではなく秋田県で実行するにはどうしたら良いか。この点で地に足がついたコンサルをしていただいていると思います」
 原則論に陥らず県の現状を踏まえて提案する----これは企業のコンサルティングと同様、ITコーディネータに求められる基本姿勢である。
 いよいよ最適な回答が見えてきた秋田県情報企画課のシステム維持管理費用削減プロジェクト。
 武藤幸子主査は「県民サービスの向上にIT化は欠かせないのでシステム投資は当然増えていきます。しかし導入費用が増加しても維持管理費が横ばいで推移するような状態を作りたい」と説明する。
「将来のコストを削減するプロジェクト」とも言えるだろう。
 歳入の厳しさが叫ばれる地方自治体にあって、秋田県は職員給与の削減をはじめ健全な財政運営に向けた様々な努力を行っている。その取り組みの一つに、ITコーディネータの力が生かされているのである。



(秋田県のITコーディネータ採用に関するQ&A)

Q1.ITコーディネータを知ったきっかけは?
A1.秋田県では過去にITCを育成する事業を実施しており、中小企業を支援する人材として、ITCの存在を知っていました。また地元にITC秋田という団体がありますので、その情報も参考にしました。

2.採用のポイントは?
A2.実は、ITC秋田とは平成17年度の終わりに本件に関わる勉強会を開き、知恵を借りていましたが、平成18年度以降のコンサルティング契約は県内から公募しました。4社から提案をいただき公平な目で審査しました。 採択ポイントは、コンサルタント独自のストーリーで進めるのではなく、秋田県の目線で考えていただけるか、県の考え方にフィットするか、という点でした。
 
3.研究・コンサルティング費用はどのくらいですか?
A3.契約額については、平成18年度は1200万円、平成19年度は仕事量は大幅に増えているものの1400万円です。コンサルティングの範囲は方針策定等の助言・指導とし、調査等の実作業は職員が実施することとしていますが、それでも抑えた金額でやってくださっていると思います。


本事例は、COMPASS2007年秋号(リックテレコム社)に掲載されました。
COMPASS http://www.telecomi.biz/compass.htm

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支援ITコーディネータ紹介

ITコーディネータ
大澤 昌氏

秋田県ITコーディネータ情報連絡会
株式会社ASTコンサルタント 代表取締役
http://www.astcon.co.jp/

 秋田県内IT企業に勤務の後、独立。ITコーディネータとして市町村合併に伴う電算統合のコンサルティング、自治体のIT調達等の実績を挙げ、県内におけるITコーディネータの地位向上に貢献している。
 今回の県庁におけるコンサルティングについても、「ITCは企業向けの資格というイメージがあったが、大澤さんの実績をみて、県庁の業務にもフィットすると判断した」(秋田県情報企画課菊地氏)と、これまでの実績が評価されたことが大きい。
 現在は最低週1日、時には連日県庁に足を運び、担当者と情報システムの共通基盤作りを徹底議論中。同課の武藤氏は「なんでも話せる方。視点が全体像、将来像といった大きなところにあるのがITCならでは」と言う。  菊地氏は、「県内のITCがさらに増えることを期待している。ITCの活躍の場は中小企業のみならず自治体にも豊富にある。IT調達の仕事などもサポートしてほしい」とITCにエールを送っている。

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