IT導入が引き出した社員の結束力
「本物のものづくり」で伝統文化を守る

株式会社 矢代仁

(右)矢代一 代表取締役社長
(左)岡本巧 取締役営業部長

株式会社 矢代仁

所在地 京都府京都市中京区室町通二条南入蛸薬師町272-2
創業 1720年(享保5年)
従業員数 36名
事業内容 呉服製造卸 大手百貨店を主な取引先としている
URL http://www.yashironi.co.jp/

伝統産業が変化を乗り越える
京都府京都市 呉服製造問屋・矢代仁

280年の歴史ある会社が直面した課題


yashiro2.jpg 「この2年間で50年分くらいの変化を体験しました」
 町屋が残る京都室町通に本社を構える矢代仁(やしろに)は、創業が享保5年。280年続いている呉服製造問屋である。主力商品は御召(おめし)だ。
 この歴史ある会社が一念発起。ITを使った販売管理システムの再構築に挑み、同時に社内の改革を推し進めた。そのスピードを表したのが冒頭の取締役営業部長・岡本巧氏の言葉だ。急激に社内が変化した理由とは何なのか。
 「時代のスピードは速くなる。同じやり方ではいけない、改革しなければと皆が思っていました」
 社是の一つ「慎んで祖業を墜すことなかれ」を守るため、矢代一社長は、「変わり方」を模索していた。伝統文化を守るには変えてはいけないものがある。しかし時代の流れに無反応では、会社は存続できない。

販売管理システムの刷新が改革のきっかけに


 取り組みの一つとして、販売管理にオフコンを導入。しかし「トップの自己満足で入れたオフコン」(矢代社長)は費用の割に思うような効果が得られなかった。「業務ごとに縦割りになっていた社内の壁を象徴するかのように鎮座していたのがオフコンだった」という。
 ところが、販売管理システムの刷新に向け二人のITコーディネータ(ITC)小形茂氏、間宮達二氏のサポートを得たことで、改革が前に進み出した。
 システム導入の前に、社員それぞれがSWOT分析(会社の強み・弱みや環境要因を整理する)を行い、皆の思いや進むべき方向が一致していることを確認。その上で「どんなシステムが欲しいか」を主体的に考える形に変えた。さらに業務報告書の提出と上司のコメント返しを徹底し、社内の情報共有を強化していった。
 2006年夏には無事、新システムが動き出し、現在は、社内の各パソコンからどの品がどこにあるか、何か売れているかを逐次把握できる。売れ筋商品の製造強化や在庫数の圧縮、そして顧客へのスピーディな商品提供が実現された。経営数値も上昇基調だ。
 本システムの構築にあたっては「呉服の世界は、委託販売という独自の商習慣があるので、呉服向けのパッケージソフトを利用した」(ITC間宮氏)。導入時の費用は相定額より安価になった。
 商品は一品ごとにコード番号を付けて納入先を管理しているが、呉服は一品物が多く、色や柄が命。「あの色の商品はどこにあるか」がわかるよう商品台帳や画像データとリンクさせ検索性を高めている。営業担当者は商品のラインナップを頭に叩き込んでいるので、それがどこにあるか、どこで売れたかを探すためのシステムと言ってよいだろう。

自立の気運が高まり、流れが変わった!


 そして、本システムは業務上の効果に加え、プロジェクトを通じて社内の活性化を導いた。
 岡本氏はこの変化に大きな驚きを覚えたという。
 「皆が同じデータを見るようになって結束力が高まってきました。また何でも自分たちでやってみようという気運が出てきました。ITが手品のように流れを変えた感じです」
 矢代仁では、商品マニュアルをパソコンで制作して最新の製品を掲載できるようにしたり、イベント会場ではパソコンを使ったプレゼンテーションを行うなど、次々と新しい取り組みが進んでいる。ITC小形氏は「ITCとして営業強化に向けたITの使い方などもサポートしていますが、社員の皆さんの習得スピードは速い」と目を細める。
 年2回開催しているバイヤー向け展示会「矢代仁展」では自社企画の高額商品を積極的に打ち出し、大きな反響を呼んでいる。これもプロジェクトを通じて、マーケットや矢代仁らしさを再考する機会を得たことによる間接的な効果だ。
 システム導入から早1年。今後は蓄積されたデータをさらに活かしたいと矢代社長は意気込む。
 「何がどこで売れたかの情報をもとに販売戦略を立てられます。私どもは卸ではありますが、今後はさらにお客様の要望を聞き入れ、メーカーとして"本物のものづくり"を継続していきたいと思います」
 会社を存続させるための改革。そこにITが存在感を示した。

 

(ITコーディネータを活用していかがでしたか)

 改革が急速に進み、会社が良い方向に動きだしました。オフコンのシステムをどうリニューアルすれば良いか悩んで研修会に参加したのがITコーディネータを知るきっかけでしたが、ITの導入をきっかけに社員の意欲も高まり、流れを変えたと思います。ITコーディネータのお二人は、何も知らない我々が勝手なことを言っても、それをやんわりと受けとめてくださる。やわらかい気持ちと包容力に包まれて知らぬ間にここまで来てしまった。そんな印象です。



本事例は、COMPASS2007年秋号(リックテレコム社)に掲載されました。
COMPASS http://www.telecomi.biz/compass.htm


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支援ITコーディネータ紹介

ITコーディネータ
小形 茂
間宮 達二
ITC-METRO
http://www.itc-metro.or.jp

 2年にわたり矢代仁のコンサルティングを続けている。税理士事務所に勤める間宮氏が財務システムの相談に乗ったのがきっかけでITコーディネータとしてのサポートを開始。二人の役割は、小形氏が経営、営業系、間宮氏が財務系とのことだ。内容はIT面のみならず、商品戦略や営業支援、イベント企画、人事と多岐にわたる。まさに「パートナー」というイメージだ。
 ITCの二人は今後もコンサルティングを続け、機会があれば矢代仁の取引先の経営改革も支援したいとのことである。
 システム導入時のITベンダー選定では、後日談もあった。提案を採用されなかった企業の担当者がITCの良さを知り、資格取得に動いたのだそうだ。ITCの認知が少しずつ広まっているようだ。

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